ある少女が、将来の結婚相手が分かると言う占いを実践してみることにした。
その占いとは、真夜中の0時、口に剃刀を咥え、水を張った洗面器の中を覗き込むと、そこに結婚相手の顔が映るというものだった。
彼女は、話に聞いた通り洗面器に水を張り、手元に剃刀を置いて時間が来るのを待った。
そして、真夜中の0時がやってきた。彼女は、剃刀を口に咥え、恐る恐る水鏡を覗き込んだ。
なんとそこには、確かに自分とは違う別の誰かの顔が浮かび上がってきている。
驚いた少女は思わず叫び声をあげてしまった。
それと同時に、口にしていた剃刀が洗面器の中に落ちてしまった。
すると、洗面器に張った水が、一瞬のうちに血のように真っ赤な色に染まった。
彼女は何がなんだか分からなくなり、頭から布団を被り、ガタガタと震えながら朝を迎えた。
朝になって洗面器の中を覗き込むと、普通の透明な水の底に剃刀が沈んでいるだけだった。
※
―それから数年後。
彼女はある男性と付き合うようになった。
話題が豊富で楽しく、性格も優しく、おまけに経済力もあった。
ひとつ、彼がいつも大きなマスクをしているところだけが気になったが、彼女はこの男性をどんどん好きになっていき、やがて結婚の約束をした。
そうなると、再び例のマスクの下が気になってくる。生涯の伴侶となる人の事は、よく知っておかなければならない。
彼女は、その下に何があろうと自分の気持ちが変わらない自信があった。
そんな彼女の気持ちに押され、男性もついに折れ、マスクを取って見せた。
そこには、鋭利な刃物でざっくりと切りつけられたような、見るも無残な古い傷跡が残っていた。
「ひどい。一体どうしてそんな傷が」
彼女は悲鳴にも似た疑問を男性にぶつけた。
すると男性が言った。
「お前にやられたんだよ」