家の近所にお墓がある。そこに一人で住んでいるおばあさんが体験した話。
ある夜、そのおばあさんは布団に入って眠っていたが、人の気配を感じて起きたらしい。
だがそんなことは日常茶飯事なので、放って置いてそのまま眠った。
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すると、次の日も眠っていると何者かの気配を感じて目が覚める。
その日も『無視して眠ってしまおう』と思ったらしいが、何故かなかなか寝付けない。
何者かが部屋を歩き回る気配がする。おばあさんは目を閉じてやり過ごしていた。
何分経っただろうか。その何者かが出て行く気配がした。
こう安眠を邪魔されてはこちらも不愉快だ。
おばあさんは外へ出て行った『それ』を窓から見た。
『それ』は和服姿の若い女性だった。
その女性はお墓とお墓の間の通路のような所で立ち止まると、フッとそこへ吸い込まれるように消えて行った。
おばあさんは思わず外へ出ると、『それ』が消えて行った所に、持っていたマッチ棒を刺して目印にした。
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次の日、そのマッチ棒を突き刺した場所をスコップで掘ってみた。
すると、中から古びた骨壷が出て来たのだ。
『誰某何々享年○○』
そのおばあさんは住職をしているうちの父に連絡して事情を話し、その墓場まですぐに来て欲しいと伝えた。
父は墓場へ行き、いつもより何倍も丁寧にお経を上げた。
その日からおばあさんの家には何も現れなかった。
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数日後、おばあさんは父にこんなことを言った。
「お陰で私のところにはあの人はやって来ない。
だからあんたのところに、今日あたりお礼に行くかもしれないよ」