それは私がまだ中学生の時でした。
当時美術部だった私は、写生会に行った時に、顧問の若い女の先生と話をしていました。
その頃は霊が見えなかった私は、他人の心霊体験に興味津々でした。
だからその時も、いつもと変わらぬ感覚で私は先生に聞いたのです。
「先生は心霊体験したことないん?」
すると先生は所謂『視える人』らしく、少し考えてから私に話をしてくれました。
※
もう6年前からですが、先生の家に一人の幽霊が居るのです。
初めてその霊に会った時は、さほど気にしなかったそうです。
普段から視えるので『あ、いるな』程度。
中学生くらいの女の子で、ワンピースを履いていて、廊下の奥の方でうつむいて立っていました。
同じ日に、座敷で座っているのと、階段の踊り場の所で座ってじっと下を見ているのを目撃しました。
先生も流石に何度も見るので多少怖くなり、母親に容姿などを話してみたそうです。
すると、母は意外な顔をしてこう言いました。
「それ、この家を建てた時の設計士さんの娘さんだ。
設計中に事故で亡くなって、亡くなるちょっと前に建設中のこの家を見に来たから」
それから先生は、少女の霊を時々見るそうです。
その設計士さんに言おうと思ったらしいのですが、なかなか連絡が取れないのだそうです。
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私はその話を聞いて心臓が止まりそうになりました。
怖かった訳でもないんです。
ただ、直感で思いました。
その少女は6年前、交通事故で亡くなった姉だと。
その連絡が取れない設計士は5年前に自殺した父だと。
私は何より姉が成仏していないことがショックでした。
早く迎えに行ってあげなければいけないと思いました。
※
先生に事情を説明し、私は翌日すぐに先生の家に行きました。
母親はついて行こうとしたのですが、どうしても断れない仕事があり、私に全てを託して見送りました。
家に着くと、先生が迎えてくれました。
先生がよく姉の霊を見るという座敷に通されました。
日があまり当たらなくて、薄暗い部屋でした。
こんな寂しい所に姉は一人でずっと居たのかと思うと、気付かなかった自分にとても腹が立ちました。
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先生は私を一人にしてくれました。
私は必死に姉に語りかけました。
「長い間一人ぼっちにしてごめんね。
気が付かなくてごめんね。
もう迎えに来たよ。一人ぼっちじゃないよ。
さあ、私と帰ろう。家へ帰ろう」
途中から私は泣いていました。
姉は私をどう思っているのだろうか。
優しかった姉に何とひどい仕打ちをしてしまったのかと。
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暫く泣いていると、誰かが私の肩を優しく叩きました。
振り返ると、全く知らない恐ろしい顔をした少女が立っていました。
少女はニンマリ笑って呟きました。
「連れてってくれるの?」
まだ少女が私の後ろに居ることより、本当の姉が成仏したかどうかが心配です。