とある夫婦が、非常に安い価格で一軒家を買った。
駅から近くに建っていてなかなか広いので、何一つ不満は無かった。
しかし一つだけ不思議な点があった。
それは、何故かいつも廊下に赤いクレヨンが転がっているのだ。妻が何度拾っても…。
最初はさほど変に思わず片付けていたのだが、次の日も、その次の日も転がっている。
しかも廊下の決まった場所に。
ちなみに、夫婦に子どもは居ない。
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流石に気味が悪くなった夫婦は、この家を売った不動産屋に相談した。
すると不動産屋は重い表情で、家の間取り図を取り出して来た。
間取り図をよく見ると、明らかにおかしい点があった。
部屋が一つ多いのだ。しかもいつもクレヨンが転がっている廊下に。
夫婦はどういうことかと問い詰めた。
すると不動産屋は重い口を開いた。
不動産屋の話はこうだ。
※
あの家には以前、男の子と両親の三人家族が住んでいた。
男の子は両親に酷い虐待を受けていて、ろくに食事も与えられず、部屋に閉じ込められていた。
やがて男の子は餓死し、両親はすぐに引っ越して行った。
その後、家はきれいに片付けられ、新しい住人が引っ越して来たのだが
「あの部屋に入ると気分が悪くなる」
と言ってまたすぐに出て行ってしまった。
次にやって来た住人も同じようなことを言って出て行った。
不動産屋は仕方なく、その部屋を壁で塞ぐようにリフォームした。
そしてやって来た新しい住人があなたたちなのだ、と。
※
「じゃあ、クレヨンもその部屋が原因なのかも」
夫婦は不動産屋と共に真相を解明すべく、閉ざされた壁を壊すことにした。
壁を掘って行くと、確かに空間があった。
その部屋はまるで廃墟のような、異様な雰囲気が漂っている。
夫婦は中に入って周りを見渡した。
その瞬間、二人は言葉を失った。
壁一面に赤いクレヨンで悲痛な文字が書かれていたのだ。