とある家族が引越しをすることになったのだが、その際に女の子が「メリー」と呼び大事にしていた人形を誤って捨ててしまった。
とても悲しんだ女の子を哀れに思った両親は
「新しい人形、買ってあげるから」
となだめ、女の子も渋々納得した。
※
新しい土地での生活にも慣れ、女の子もやがてメリーという人形の存在を忘れていた。
そんなある日の夜、家に電話が掛かってきた。
両親がまだ帰宅していないため、女の子が電話に出る。
「もしもし」
「…」
「もしもし? どなたですか?」
「私、メリーさん。今、ゴミ捨て場にいるの」
「えっ!?」
ガチャ…。
電話はそこで切れてしまった。
メリーと言えば、私が失くしてしまったあの人形だ。悪戯電話だとは思ったが、何とも不気味だ。
※
すると直後、また電話が鳴り響いた。『またきた…』と思いつつも、両親からの電話かもしれないと思い女の子は受話器を取った。
「もしもし、お母さん?」
「私、メリーさん。今、○○駅にいるの」
ガチャ。
また電話が切れる。
○○駅と言えば、女の子が住んでいる地域の駅。女の子は悪戯電話にしては何かがおかしいと思い始めていた。
※
そしてまた電話が鳴り響く。『またメリーさんなんじゃ…』と思ったが、女の子は母親からの電話だと自分に言い聞かせ受話器を取った。
「もしもしお母さん!? 早く帰って来て!!」
「私、メリーさん。△△の前にいるの」
ガチャ。
△△と言えば女の子の家からすぐ近くにあるお店だ。女の子はこの時、悪戯電話の主が次第に近付いて来ている事に気付いた。
※
言いようのない恐怖が女の子の心を蝕み始めた。危険を察知した女の子は、母親の携帯電話へ連絡しようと受話器を取った。
するとほぼ同時に電話が鳴ったため、電話を受けてしまった。
恐る恐る受話器を耳に押し当てる。
「…はい…」
「私、メリーさん。今、××ちゃんのお家の前にいるの」
ガチャ。
女の子は戦慄した。××という自分の名前を言った上に、何と電話の主が自分の家の前に来ているのだと言う。
※
あまりの恐怖に女の子は電話線を抜き、玄関から外の様子を伺った。
外には誰も居ない。電信柱の街灯が道路を不気味に照らし出しているだけだ。
居ても立っても居られなくなった女の子は、玄関の鍵が掛かっていることを確認し、自分の部屋に閉じ籠もろうと階段に足を掛けた。
するとその瞬間、電話線を抜いたはずの電話が鳴り響いた。
鳴るはずのない電話が鳴った。もう訳が解らなくなった女の子は、恐怖と怒りを露わにして電話に出た。
「あなた一体何なのよ!いい加減にして!!」
「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」