これからする話は、私の作り話ではない事を言っておきます。
信じてくれとは言わないし、信じてくれる人がいればそれで良いと思っています。
私は関東のT県U市(県庁所在地)に住んでいて、高校生と中学生の二人の娘を持つ40歳の普通の会社員です。
趣味は特に無いけれど、深夜寝付けない時など時々一人でドライブをする事があります。
今回はその時に経験した事を書こうと思います(実際は未だに続いているかもしれない事ではあるのだけれど…)。
※
その事があったのは先週5月23日の土曜日、深夜の事…。
その日は早朝からゴルフ仲間とB市にあるカントリークラブに出かけ、適度に疲れて帰って来たのが夕方前の15時過ぎでした。
朝早く起きてのラウンドだったので、帰って来てからひと眠り。
夕食だと起こされたのが19時で、その後は居間で妻と二人テレビを視て過ごしました(上の娘はバイトで下の子は塾)。
21時に下の子を塾へ迎えに行き、家に帰った時に丁度バイトから帰った上の子と同じく帰宅しました。
久々に家族みんなが揃ったので(僕たち夫婦は夕食は済ませました)、みんなでダイニングで暫しの団欒をして、23時頃にお休みを言って解散…。
※
一度は寝室のベッドに入ったのですが、夕方に寝てしまったのでなかなか寝付けず、一人深夜のドライブに出かけることにしました。
お気に入りの曲を聴きながらの夜のドライブは、やはり良いものだなと思いながら、いつもは空いた環状線を走るのですが、今回は少し遠出をしてN市まで足を運んでみる事にしました。
N市は関東地方では有名な場所で、家康公縁の地でもあります。
N市まで到着しましたが、流石にI坂峠には上る気が起きず、そのままUターンして帰路につく事にしました。
今回話す事はその帰り道で経験した事です(前置きが長くなってしまいましたね…)。
※
いつもはN市の帰りは有料道路を使って帰るのですが、その日はなんとなく下道を通って帰りました。
そして下道を通って帰る途中にKトンネルというのがあって、そのトンネルの脇に旧道の小さな峠道があります。
普段は全くそんな峠道を使う事はないのだけれど…。
本当に馬鹿げた話だけれど、丁度聞いていた音楽がとても心地が良く、もう少しだけ聴きながら運転したいと思い、少し遠回りしたくなってしまいました。
そんな時、丁度トンネル手前の旧道が目に入り、何気にハンドルをその方向に向けていました。
その峠は今では日中も誰も通らない道になっていて、道路半分以上に渡り草が生い茂る状態でした。
その道に入ってから『この道はちょっと失敗したかな』と思ったのですが、街頭も何も無い道でUターンも面倒で、そのまま荒れ果てた草の生い茂る道を走って行きました。
その道は丁度峠の頂辺りに男根の形をしたご神体が祀られていて、この道は地元民からは金○峠と言われていました。
※
真っ暗な道を走ること十数分…。
ようやくそのご神体に差し掛かり、過ぎようとしたその時…。
「ドン・ドン・ドン!」
間違いなく私の車の屋根を叩く音が聞こえました。
一瞬、聴いている音楽から出る音ではないかと思いましたが…更に…、
「ドン・ドン・ドン!」
そして…、
「ド・ド・ド・ドン・ドン!」
今まで何も感じずに運転していたのが、一気に背筋に冷たいものが走り、全身爪先から頭の天辺まで鳥肌が立つのが分かりました。
それまで荒れた道を慎重にゆっくりと走っていましたが、一気にアクセルを踏み込み、物凄い勢いで車を走らせました。
猛スピードで車を走らせている間にも屋根を叩く音は止まりません。
それどころか音はどんどん大きくなり、さっきまで聴いていた音楽よりも大きな音となって車の屋根を叩いています。
あまりの恐怖に音楽のボリュームを最大音量にして「その音」が少しでも聞こえないようにして、漸く旧道を抜け反対側トンネルの出口に続く新道に差し掛かりました。
丁度新道に出る時に同方向の車を確認でき、少し気持ちが落ち着いて…。
今まで最大音量で鳴らしていた音楽を下げたその時、今度は間違いなくリア窓後方…トランクから…、
「ド・ド・ド・ド・ド・ド・ドン!ドン!ドン!」
と物凄い音がしました。
そして…。
私は咄嗟にバックミラーを見てしまいました。
そしてバックミラーに映っていたものは…紛れもなく後ろの窓から中を覗き込むように見ている髪の長い女でした。
「うわああああ!!!!!!!」
多分、今まで生きてきた中で一番大きな叫び声だったと思います。
※
その後はバックミラーは一切見れず、可動式の自動ドアミラーも折り畳み、ひたすら先程の倍近い猛スピードで新道を走り続けました。
そしてコンビニの明かりが見えた時、本当に、本当に『助かった…』と心から思いました。
コンビニの駐車場に車を停め、恐る恐る車外に出て車の周りを見てみましたが、どこにも叩かれたような傷や凹みはありませんでした。
ガタガタ震える足でコンビニに入り、温かい缶コーヒーと煙草を買い、少し心を落ち着かせて今あった事を考えましたが、確かにバックミラーには女が覗き込んでいました。
顔ははっきりとは見えなかったけれど…確かに女はそこに居た…。
私は今まで幽霊の類も見たことはなかったし、信じてもいませんでした。
でも確かに「それ」は居たんです。
家に帰ってからもその夜は寝付けず、朝方まで一晩中テレビを点けていました。
※
そして、冒頭に書きましたが、未だに続いているかもしれない事…。
一昨日、25日の夜22時過ぎの事です。
2階の自室の書斎で仕事のデータ整理をしていた時、PCデスクから向かって後ろの窓を「ドン!」っと叩く音に驚かされました。
背筋に先日と同じ恐怖を感じつつ、恐る恐る後ろを振り向きましたが、窓には何もありませんでした。
そして書斎から見下ろせる国道線を見下ろした時…。
私の家の窓を通りから見上げる女が立っていました…。
薄暗い街頭とかなり離れた距離から、その女の顔は見えませんが、間違いなくこちらをじーっと見ているように感じました。
その日の夜から私は窓を閉め切り、カーテンも閉じたままです。
もう暫くは夜のドライブどころか部屋のカーテンを開けるのも怖い状態です。
家族はみんな、この手の話は大の苦手なので話していません。
仲の良い信頼の置ける会社の仲間にこの話をしましたが、お祓いを受けた方が良いと言われました。
冗談抜きで今週末に神社でお祓いを受けようかと思っています。
この話は本当の話です。決して作り話ではありません。
私だってあの夜の事は未だに信じられないのです…。