某廃墟ホテルに霊能者を連れて行き、その様子をカメラに収めるという番組があった。
そのホテルは昔、火災が発生し多くの人が亡くなった場所でもあり、
「女性の霊を見た」
「叫び声が聞こえる」
などの噂が絶えない曰く付きの場所でもあったようだ。
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ホテルに入ると中はかなり物が散乱しており、かつてここがホテルとして通常に営業していたとは思えないほど、その光景は酷いものであった。
そこから2階、3階へと上がって行くと、不意に霊能者が
「人が叫ぶような声が聞こえる」
と言い出した。
早速カメラを再生してみると、確かにうめき声のようなものが微かに聞こえる。
この声がどうも隣の部屋から聞こえると言うので、その部屋に入ってみる事になった。
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部屋の光景は他と同様に散らかっており、かつての面影は無い。
ふと目を向けると大きな窓が付いており、カメラマンが下を見下ろすと、ちょうど見下ろした位置に大きなプールがあった。
取り敢えずホテル内は一通り回ったので、最後にプールに寄ってからロケを終りにしようという事で、全員プールへと向かうことにした。
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プールに着いたスタッフは、霊能者に何か感じるかと聞いてみた。
すると指をスッと向け、あそこの部屋から物凄い形相をした男がこちらを見下ろしていると言う。
その霊能者が指を差した方向を見ると、先ほどうめき声が聞こえるというので覗いてみた部屋である。
「もうこれ以上は無理です。これ以上、ここには居たくない。早く帰りましょう」
と怯えた表情の霊能者が言うので、スタッフも了承し、ロケバスへと引き返す事にした。
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ホテルを後にした車内で霊能者が恐ろしい話をする。
「私は最初、あの男の霊は我々を見て睨んでいると思った。
でも違うんです。そんな事じゃない。もっと恐ろしい事です。
ホテルの火災は放火によるものです。
部屋が燃え、男が逃げられない状況であると知っている中、犯人は男の目の前で息子を惨殺し、男から見える位置に死体を置いたんです。あのプールに…。
男が我々に見せたあの表情は、死への絶望と、どうすることも出来ない無念によるものです。
男は死んだ後も、永遠にその場面を繰り返し繰り返し見ているんです」
…犯人は未だ逮捕されていない。