知る人ぞ知る港区の白金トンネル。幽霊が出るという有名な場所だ。
この間、叔父さんから聞いた話。
都内で小さな商店を持ってる叔父さんは、その夜店も終わり、仕事関係の人に持って行く物があったので、車で五反田に向かった。
途中、いきなり尿意をもよおしたが我慢していた。とうとう我慢できなくなり、白金トンネルの近くで車を停め、東大の研究所の裏あたりの藪の中に入って行った。
俺なら行かないけどね。東大の研究所ってものすごく広くて、確か昼間は植物園ってことで一般の人も入れてたと思う。
周りはずっと金網で囲われてて、鬱蒼としていて、昼でもちょっと怖い。で、まあ、叔父さんは人目を避けて、藪の中で用を足してたわけだ。
ほーっとしていると、足元でかさかさ音がする。まさか蛇じゃないだろうなと、さっと緊張したが、見ると何かが動いている。
暗くてすぐには分からなかったが、よく見てみると、マンホールの蓋ぐらいのでっかいコマがぐるぐる回っていたと言う。
模様というか、柄がなんとも古臭いコマだ。
「!!!!?」
叔父さんは物凄い恐怖心に襲われ、一目散で車に戻り、仕事も忘れ家にすっ飛んで帰ったそうだ。
その話を聞いて、俺は「それってUFOなんじゃない?」って言ったんだけど、「いや、あれは間違いなくコマだった」って。
でも、どうして…。
調べると、江戸時代にあそこら辺一帯が処刑場だったということは分かった。
※
そのことを正月に友人に喋ったら、「そうか…」って黙り込んじゃった。
なんでも、白金の有名な「Mホテル」に彼女と泊まった時に、とんでもない経験をしたというのだ。
そいつが彼女とメシを食って、青山のクラブで遊んだ後、その「Mホテル」に泊まった。
まあ、Hしてそのまま寝たわけだな。すると、夜中にそいつはふと目が覚めた。
何か音がする。
寝ぼけた目で辺りを窺うと、洗面場で誰かが手を洗ってるような気配がする。
頭だけ起こして洗面場の方を見ると、曇りガラス越しに人の影が見えた。
そいつはとっさに、誰かが部屋を間違えて入って来たに違いないと思った。
しかし、鍵をロックしたことを思い出し、とたんに恐怖心に襲われた。瞬間、金縛りになってしまった。
隣の彼女を起こそうとしたが、体が動かず、声も出ない。
すると、部屋の隅の方で視線を感じた。
目だけ動かしてそっちを見ると、そこにはざんばら髪の落ち武者の首が浮かんでた。
口の端から血を流し、目は真っ赤に充血している。
「ギャーッ!」
心の中で叫び声を上げると、その首がビューッと自分の方へ近づいてきた。
そして、目の前でピタリと止まり、
「おのれええ」
といったという。
そいつはそのまま失神してしまった。
翌朝、目が覚めると速攻でチェックアウトしたと言う。
彼女には何も話さなかったそうだ。そいつは今でもその首が頭にこびりついて離れないといっていた。
以上、白金にまつわる俺が聞いた話。くれぐれも白金の「Mホテル」には行かないように…。