今から約10年くらい前の話だ。
当時俺は大学2年で、夏休みに田舎に帰省していたんだ。俺の田舎は観光地ではあったが、地元民向けの遊びスポットって少なかったんだよね。
夜に遊ぶと言ったら飲み会や女子をナンパ、心霊スポットに突撃するくらいしかなくて退屈な街だなと思ってた。
事件があった日はよく一緒につるんでいたA、B、Cの4人でナンパに行ったが、見事に玉砕し暇を持て余していた。
となるとやる事といったら酒を飲みながらゲームやるか、心霊スポット突撃くらいだ。
昔からチビで調子こきのBの提案で、心霊スポットに行こうという事に。当時『ほんとにあった呪いのビデオ』っていうDVDが流行ってて、心霊ビデオ撮って投稿してお金をもらおうぜっていう流れだったと思う。
1件だけ行って心霊ビデオが撮れなかったら、骨折り損だという事でこの日は数件突撃しようという事に。
結局突撃する候補を3件に絞ったが、以下の通りだ。
1. 大○湖付近にある廃ホテル
火事によって、宿泊者などが亡くなったといういわくつきの場所
2. 隠れキリシタンの墓
その名の通りの場所。江戸時代に禁止されていたキリスト教の教えを隠れながら信仰していた方々の古いお墓らしい。
ちなみに、この墓内で首吊り自殺などもあったようだ。
3. ○山の賽の河原
恐山と兄弟と言われる北海道の南部にある霊山。日本全国にも点在する賽の河原のひとつだ。
以上3スポットを回ろうぜという事に。
ワクワク体験できる上に、お金もゲットできて、一石二鳥!とこの時は思ってた。後から凄く後悔したけどな。
※
突撃場所が決定したところで、早速懐中電灯4個とデジタルカメラを準備して出発。Aの車でAが運転、助手席に俺、BとCは後ろの席という陣形である。
A以外はビールを飲みながら、レッチリを聴きながらノリノリのテンションで1番目の廃ホテルを目指し1時間半ほどのドライブへ。
廃ホテル付近は街灯はゼロ、月明かりと車のライトを頼りに進んでいく。真っ暗な細い道と深い森の中を車のライトのみで走るだけでも結構不気味で正直俺は結構ビビッてた。
到着時間は11時を少し過ぎた位。静まり返った廃ホテル前に車をつけたが、真っ暗だった上に霧が若干出てきてて正直なんで来たんだろうと若干後悔していた。
そんな空気を変えたのがビールとレッチリの力でテンションMAXのBだった。Bは「うほぉお、いかにもって感じの場所だな!!俺はやればできる子だー!」とか訳の分からん事を言っていた。
廃ホテルの中は火事があった事もあり、結構床なども抜けていて危険だった。撮影係の俺はデジカメであたりを撮影しながら進んだ。ぶっちゃけ真っ暗すぎて何が移ってるのか全く分からない状態だった。
しばらくするとDが「なんか奥の方から声が聞こえないか?」と言い出した。おいおい、びびらせんなよとか思ったが、結構顔がマジだったので、俺がみんなにジェスチャーでシーって合図した。
「…ぅぉぉ…ぉ」
うん、なんか聞こえた。マジだった。一気に場の空気が凍りついた。なんかこういう時って中々言葉が出てこないのな、なぜか。先頭のBにこれもジェスチャーで帰ろうという合図を送った。
4人とも無言のまま、且つ何かよく分からないうめき声に気づかないフリをしながら車に早足で向かった。段々とさっきまで聞こえていた声の数が増えているのに気づいた。
車に着く頃には、さっきとは比にならないくらい大きなうめき声に変わっていた。
急いで後ろを向かないようにすばやく車に乗った瞬間に車の中で「ヴォッ…!」という声が聞こえた瞬間、超急発進で車を出し、ひとまずこの場から離れようとAがナイスドライブテクニックで謎のものとのエンカウントから逃れることができた。
廃ホテルから結構離れたあたりで、車中では廃ホテルでの声について結構盛り上がった。
B「うはwwwマジでやばかったwwww」
A「最後車の中で聞こえたのはやばかったなwww」
ノンアルコールなのにAはテンションが高かった。
俺「デジカメ回してたから家帰ったらみようずwww」
D「賞金ゲットおいしいですwwwww」
とか怖い体験をしたばかりだったが、なぜか変なテンションで盛り上がっていた。
これで取り敢えず帰れるなと思ったが、ここで調子こきのBが「でもまだ霊は見てないよな? 次もいこうぜ」と。
確かにまだ見ていないけど、十分だと思っていた。
B「おい、お前らびびってんだろwww」
A・D「びびってねぇし!OK、次の隠れキリシタンの墓行こうぜ」
正直、俺はもうええやんとか思ってたが馬鹿にされるのも癪だったので付いて行くことにした。この時点で確か深夜0時だった。
※
隠れキリシタンの墓に着いたのは大体深夜12時50分くらいだった。このスポットの付近だが、春は桜が綺麗なスポットで結構有名な場所だが夜は逆に街灯ゼロ、林道ということでマジで不気味だった。
到着するや否や、墓の門が怖い。そして墓の形も十字の造りだったり、横に長かったり、見慣れい異様な形をしていた。
さらに辺りには背の高い木が多く、風にが吹くたびにガサガサって音が聞こえる度にビクッとしちゃいそうな場所だ。
一応トイレなども門を入って右の方にあったり、手入れはされている感じはしたが、墓と木のガサガサという音で、しかも真っ暗ということもあって、いかにも出そうな雰囲気がした。
さっき怖い思いをしたばかりだというのに、Bは車中でかなり酒を飲んでいたこともあり、着いて即単独でトイレに入って行った。
正直凄く根性あるなあと思った。ビビリな俺たちは取り敢えず墓内の敷地を3人一緒にうろうろしていた。
しばらくするとトイレの方からBの「ぎゃーっ!」という叫び声が聞こえてきた。巨大な仏像などは残ったままで結構不気味なスポットであった。
慌ててBのいる方に向かったら、Bの単なる悪乗りで俺たちを驚かそうと演技をしただけだったようだ。
Bというやつはこういうキャラで、結構空気を読めない&常識がないやつだった。ただ、こういうやつなんで怖いもの知らず的な面もあり、心霊スポット突撃にはかかさない人員だった。
B「確かに不気味な雰囲気だけどさ、さっきよりは全然だな」
A「そうだなあ、単なる珍しい形をした墓があるだけだな」
二人が言うように不気味ではあったが、特に怪現象はなく、拍子抜けした感じだった。一応デジカメも回していた。
B「ここも駄目なら最後の砦、賽の河原いってみっか!」ということで霊山と言われる○山に出発した。
※
この○山は上ったことがある人なら分かるが、8合目付近に駐車場がありそこまでは車で上ることができるのだ。
上る途中にも謎の地蔵があったり、結構不気味である。ちなみに、昔この山の麓にはロンテ○ーザという居酒屋チェーンを運営している会社名と同じ観光施設があった。
(ググると出ると思うが、でっかい金色の仏像や洋風な石造などを置いているカオスな施設だった)
すぐに入場客が来なくて潰れてしまったが、巨大な仏像などは残ったままで結構不気味なスポットであった。
○山に車で登ると道の途中に地蔵と木の看板みたいなのがある。
看板には文字が書かれていたがぶっちゃけ車の速さと辺りの暗さで何を書いているか全く見えなかった。賽の河原の近くにある駐車場についたのは2時半くらいだったと思う。
この○山は標高自体は高くはないが、活火山ということで独特のにおいと霧のせいかこの日きた中ではダントツでやばい雰囲気がした。
というか、そもそも霊山と言われている場所だし、そりゃそうだよな…。
駐車場に着くと、その異様な雰囲気のせいか降りるのがほんとに嫌になるくらいだった。
A「まじで行くのか…」
D「なんか時間も2時って…いかにもって感じだよな…。賽の河原もあるんだろ?」
俺もAもDも結構弱気だった。
弱気になる理由はいくつかあった。
・まず地蔵の数が半端ない
・霊山て結構しゃれにならんのでは?
・賽の河原って子供の霊関係だったよな…?
・上る前より霧が異常に濃くなっていること
などなど色々挙げるときりがない。
そんな中でもBは余裕をかましていた。こういう時のBはある意味では勇者に見える。
B「大丈夫だって。俺がいるから、なんともねーって!」
『なんで?』って思ったけどこの時は本当に心強く見えた。
さらにB「マジこんなのでびびるとかお前らへたれすぎ。だっせー」とか凄く煽ってくる。
あまりの煽りにAもDもむっとして「じゃあ、ついてってやるよ」
しょうがないので、俺も付いて行くことに。少し歩くとすぐに賽の河原と地蔵がずらーっと並ぶ一本道がある。
A「うわあ、マジであるんだな。石がたくさんつまれてるな…」
D「なんだろ、この変な気分になってくるなここ」
しばらく歩いてるとまたBが煽ってくる。
B「お前らほんとビビリすぎだよな。たいした事ねーって!」と言った瞬間につまれている石を蹴って倒しやがった。
これにはさすがに俺たちも凄く引いた。俺「さすがにそれはねーだろ…。まじ引くわー」
B「なにマジになってんだよお前。ださいよ」
ここで俺もちょっと頭にきて「確かにこういう場所に夜遊びに来てる俺もあれだけど、最低限のルールみたいなのはあるだろう? こんな非常識な事するんなら、俺帰るわ」
AとDもさすがにこれには付いて行けないということで結構場がしらけて帰る事になった。
車中ではBも懲りたのか、
B「さっきはごめんね。悪乗りしすぎたわ」
俺も酒が入ってたからまあしょうがないということで気を取り直すことにした。それでその日はしらけて、Aの家に戻ってゲームのサッカー大会をすることになった。
※
Aの家に着いたのは3時半くらいだった。Aの家に着くとAも酒を飲み始め、サッカーゲームをやりながらその日に起こった事を振り返った。
結局、何か起こったのって1件目だけだったよなとか、俺が怖がりすぎとか笑い話をしていた。
すると突然、家の中から「バチンッ!」っていう音が鳴った。
なんというか金属がぶつかるような音っていうのかな…。結構大きな音だった。
最初は気にしなかったが、今度は「バチン、バチン!」と2回。
ここでさすがにみんなで「何だこの音?」って話になった。もしかしてラップ音じゃねーのか…?
とか言ってる内に、また「バチン!バチン!バチン!」と3回。
音だけが鳴ってたのでそこまで怖くなかったが、間違いなく何か俺たちが普段体験することができない現象だということだというのが解った。
B「これラップ音だぜwwww今3回鳴ったから次4回鳴ったりしてwwww」
すると次は4回鳴った。
BのテンションはMAX。しかしこの直後にテンションが駄々下がりになるとは…。
B「うはw4回鳴ったwwwwじゃあ次は5回かなー…」
鳴らない…。ジョンカビラの実況が虚しくTVから聞こえた。シーンと静まり返った瞬間ふとなぜか皆が同時に窓を見た。
「うぉおおおおおおおおお」
窓一面にでっかい男の顔がなんともいえない表情でこちらを見ていた。
「うぉおおおおおおおおお!!!」
人間マジでびびった時は「うぉおおおおおお」と言うらしい。さっきまで余裕だったBさすがにびびって、4人で布団の中に包まり、何がなんだか分からないこの状況に怯えてた。
こういう状況で自然と出てくる言葉が「ごめんなさい」だ。4人でずっと「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、すみません、すみません、すみません」とひたすら謝り続けた。
本当に恐怖そのものだった。
どのくらいそうしていたかは分からないが、気づいたら鳥の鳴き声が聞こえてきた。『朝が来た…?』と思って恐る恐る窓を見ると外は明るくなっており、顔は消えていた。
なぜこんなことになったのかという事を話し合った。遊び半分で行ってはいけないところに行ってしまったからという事に落ち着いた。
取り敢えず明るくなったし、その日に行った3件のスポットに行き、霊に謝りに行こうという事に。
1件1件回って最後に○山の賽の河原という順序に行くことに。
眠い中目をこすりながら、最後の賽の河原に着いたのは昼の12時くらいだった。取り敢えず、Bが蹴って倒した石を元に戻した上に、山に向かって謝ろうということに。
A「お前蹴って倒したのってどこだよ?」
B「ああ、覚えてる。こっちだ」
少し歩くと突然Bが立ち止まった。
というか少し震えていた。
「どうしたんだ?」と訊くと「倒した石が元に戻ってる…」
ここでさらにゾッとした。
その後は4人揃って「ほんとにすみませんでした。もうこんな馬鹿なことはしません」って謝って帰りました。
ちなみにビデオだが、何も写っていなくて不思議でした。
電源が落ちてたのかな…。いや、でも、ちゃんと作動してたはずなんだけどね…。