俺が警備員をやっていたのは、テナントが幾つか入っているビルだった。
常駐警備員というのは、途中に待機時間があるくらいで、基本的に交代制の24時間勤務なんだよ。
故に深夜ビル内の巡回や、駐車場の巡回などもやるんだけどね。必ず決まった時間に発報するパッシブセンサー(人影などで反応するもの)があるのよ。
まあ、先輩や隊長から
「あのパッシブはオカルト発報だから」
と聞いていたから、特に気にしてはいなかった。
でもね、発報があれば一応行かなきゃいけないのが警備員だからさ、一応行くんだよ。6階にね。
※
あの日も毎度の事ながら発報したのだが、俺はその時、駐車場の巡回をしていたんだよ。
無線で、
「また発報したよ。外から何か見える?」
と言われたからさ、
「見て来ます」
と言って、ビルの表に回って6階を見上げたんだよ。
外から見て初めて気付いたんだけど、6階のパッシブセンサーのある辺りが青く光っている。
凄くビビって、無線で
「6階パッシブセンサー近辺で光を見た!急行求む!」
と連絡してから、防災センターへダッシュで戻ったんだわ。
※
防災センターへ戻り、各階のエレベーターホールや各フロアのモニターを確認していたら…。
6階に急行した先輩の後ろを、何か青い輪郭の影のようなものが付いて行っている。
先輩に無線で、
「先輩の後ろに何か居ます!」
と言ったのだけど、無線が届いていないのか、全然気にせず歩いている先輩…。
でもモニターに映る影は、先輩の後ろをずっと付いて行くんだよ。怖くてさ…。
※
暫く経って先輩が戻って来たから経緯を話したのだけど…先輩から信じられない話を聞いたんだ。
先輩「いつものことだと思って、6階に行かずにトイレ行って来た」
俺「えっ? だってモニターに先輩が映ってましたから!マジで影が居たんです!」
先輩「そんじゃモニターの録画見てみようぜ(笑)」
なんて余裕をかましていたから、少し腹が立って録画を見たんだよ。
そこに映っていた警備員は、よく見たら先輩ではなく…俺だった。
もう訳が解らなくて、あの当時はもう6階へ行くのが怖くなってしまった。