不思議な体験や洒落にならない怖い話まとめ – ミステリー

青木ヶ原樹海探索記

青木ヶ原樹海(フリー素材)

自分は卒業旅行で富士の樹海に行った大馬鹿者です。

わざわざ九州から青春十八切符を使い、普通列車を乗り継いで…。

とにかく幽霊を見たいという目的で、友人と二人で二日掛けてののんびりな旅でした。

そして三日目の昼ぐらいにようやく青木ヶ原樹海というバス停に辿り着いたんです。

その時点でもうヘトヘトだったため、バス停の目の前の民宿に入ったら、「何しに来たの?」と宿の主っぽいおばちゃんが睨んできました。

『あー、何か勘違いされてるな』と思い、「富士山を見るついでに樹海を見に来ました。泊まる所を探してるんです」と適当な事を言い、出来る限り爽やかに話しました。

そしたら段々対応が優しくなって、最終的には素泊まり料金なのに飯まで出してくれる事に。

でもよく考えたら、樹海に近すぎる宿の場所とか、そのおばちゃんが用事がある時は「私は離れにいるから」と言っていた事などを考えれば、ヤバイ宿という事に気付きそうなのに…。

その時は疲れ切っていて頭が回らなかったのか、『良い所だなあ』などと思ってしまった。

そして、この三日間ろくに寝ていなかったため、友人は物凄い鼾を掻いてすぐに爆睡。

一人で昼の樹海散策に行ったところ、予想外に美しい樹海の風景に圧倒され、次第に怖い場所という認識を失いつつありました。

それで順路を離れて適当に歩いていたら案の定迷子に。この時はちょっと頭がおかしかったのかもしれません。

かの有名な樹海に迷ったのに、『携帯のアンテナも立っているし何とかなるだろ』と適当に歩いていたら、妙に生々しく木からロープが垂れ下がっているじゃないですか。

嬉々として木に登り、何とかしてそれを手に入れた時「自殺者は見つかりにくい所で死ぬ傾向がある」とどこかで見た事を思い出し、急にパニックに。

必死で走り回って出口を探していると「ゴォーン」という車の音が!

そちらに向かって行くと道路発見。何とか事無きを得ました。

その後は宿に帰り、少し寝てからご飯を食べ、風呂に入ってテレビを視て…、そして深夜0時に「樹海行こう!」という話になりました。

そしたら22時くらいに急におばちゃんが来て、「夜お出かけになりますか?」と尋ねてきました。

『やばい、樹海行くとか言ったら怒られるのかな?』と思いつつも、「折角なので樹海を探索してみようかと…」と恐る恐る本当の事を言ったところ、意外に「そうですか。では鍵開けときますね」と容認姿勢。

この謎の訪問に友人と二人で首を傾げながらも、深夜0時になったので意気揚々と樹海へ。

ところが昼間とは打って変わって重過ぎる樹海の雰囲気にビビってしまい、テンションは直滑降。

言葉少なに順路を歩いて、何事も無く出口に到着。その時点で当初予定していた「樹海で怪談百物語」企画は完全に中止が決定していました。

樹海に来て何も無いのはつまらないと思いつつも、あまりに重苦しい樹海に戻る気がせず、結局一般の車道を陽気な歌でも唄いながら帰る事にしました。

ここで急に「オレが急に歌を中断して無言でダッシュしたら…」という変なドッキリを思いつき、すぐさま実行。

「何? どうしたん?」と不安気に友人もダッシュで付いて来ました。

宿に着いてから「何があったんだよ!」という友人の問いに、「実は急にジーンズ引っ張られたんだよ」と適当な嘘を吐きました。

そしたら「えっ!マジで!? どこどこ?」としっかり騙されてくれたので、「膝の裏んとこ」とまた適当な事を言いました。

すると「あっ。ホントだ…手形がある。あ、あとなんかポケットに入ってんよ」と、昼の間に拾ったロープとジーンズを渡されました。

「手形?」と訝しがりつつ膝の裏を見てみると、そこにはハッキリと小さな白い手形が付いていました。

自分はあまりの事に声が出ず、頭の中が真っ白になりました。

恐怖で声が震えそうになりつつも何とか友人に「今日はもう寝よう」と言って、不気味なジーンズとロープを投げ出し布団に包まりました。

その後、眠れないままどれくらい経ったのか分かりませんが、自分達以外には泊まり客が居ないはずなのに、階段を昇り降りする音が聞こえ始めました。

次に風でガタガタ音を立てていた窓が等間隔で「ドンドンドン」と鳴り始めました。

更に、どこからか人の話し声が聞こえてきました。

極めつけに、すぐ隣の友人が寝ている辺りから「ガリガリガリ。ガリガリガリ。ガリガリガリ」という音が聞こえてくるのです。

それまで『何が何でも布団から出ない!』と思っていたのに、『布団からちょっと顔出すくらいなら…』と、何故かちょっとだけ友人の方を見てしまいました。

友人は目を見開いてこちらを見据えながら、右手でガリガリと畳を削っていました。

幸いな事にそれを見た時点で意識を失ったようで、気付いた時にはもう朝でした。

友人は何事も無かったかのように起きてテレビを視ていました。

そのあまりにも普通な感じから、『やっぱり昨晩のは夢だったのかな』などと考えていたのですが…。

友人の枕の上の方、右手で畳を引っ掻いていた先に、首吊りに使われたと推測される縄と、手形の付いたジーンズが畳んでありました。

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