地元は海の前の漁師町(太平洋側)の話。
ここ数年は少なくなったが、幼少の頃から海女さんの真似事をしてアワビやサザエを採ったり、釣りをするのが子供の遊びだった。
朝に堤防まで行くと、まず旗をチェックする。赤旗が立っていると漁は禁止。
もちろん放送も入るから、誰もが暗黙の了解で守り、事故も無く安全に過ごしていた。
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大型連休になると、稀に他所から海に泳ぎに来る人が居て、大体が家族連れ。
しかも海水浴場ではないので何も無い為、多くても3、4組の家族。
その日も赤旗が出ていたが、他所から暮れば知るはずも無い目印。
そんな中、家族連れの兄弟(小学生の男の子2人)が、陸から25メートルほどの距離のテトラポット付近を浮き輪で泳いでいたんだ。
ただ太平洋側というのは基本的に波が高いし、赤旗も出ているから更に高くなって行く。
波は何回かに一度、大きな波が来るのだが、弟の方がそれに飲まれた。
そしてテトラポットに足が挟まり、浮き輪は風で飛ばされてしまった。
顔が辛うじて出るくらいで、お兄さんは自分の浮き輪に弟を捕まらせて何とか必死に励ましていた。
しかし海水を飲んでしまい、父親が助けに来る頃には弟は意識を無くし、そのまま亡くなってしまった。
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陸に上がってから、お兄さんは両親に
「白い手が弟君の足を掴んでいた!!」
と何度も訴えていた。
起こった事を要約すれば、波に足を攫われ、運悪くテトラポット挟まってしまったとなるのだが…。
実は、白い手は素潜りをしている時に見た事がある。一瞬ではなく、友達にも確認し、みんな何回も見ている。
ワカメや鱧と並んで、海底から何本も生えているのだ。
今思えば、海に行く時は必ず海を祀る神様の所に寄っていた。
そのお陰か見かけても害は無かったので、危険なものという認識は無かった。
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改めて思い返すと、こうしたローカルルールというのも、理由があっての事だと思う。
みなさんも出掛ける時に地元の人と話す機会があれば、ローカルルールを聞いておいて、それを出来るだけ守る方が賢明だと思います。
子供さんの亡くなった場所の堤防沿いには、今も地元の人々によって献花されています。
以上、20数年前の話でした。長々と失礼しました。