子供たちを連れて実家に遊びに行った時のこと。
普段から穏やかな母と明るい父と、同居の妹一家と、みんなで楽しく話していた。
途中で母が「そうだ、○○(長男)にいい本を見つけたのよ♪」と笑顔で押し入れを開けて、下の段を見るために座ったのだが、いつまでも動かない。
探している感じでもない。
長男が「どうしたの?」と軽く肩を叩いたら、母の身体は静かに床に倒れた。
会話していた時の笑顔のまま、既に亡くなっていた。
手にはかつて私が母に貰って大切にしていた本がしっかり握られていた。
※
あまりに突然過ぎて、よく解らないまま解剖に回され、葬儀を済ませた。
死因もよく判らないらしいが、取り敢えず心不全ということにされていた。
下の子にはかなりの恐怖体験になってしまったらしく、それ以来私から離れられなくなってしまった。
文字通り、お風呂もトイレも、寝るのも一緒。
※
実は私は、かつてこれと同じ光景を見たことがある。
母の叔母に当たる人(祖母の妹)が、私が小さい時に外出しようと玄関の上がり框に座って靴を履いている途中で亡くなっている。
「カルピス、何味がいいの?」というのが最後の言葉だった。
妹はこの時まだ生まれていなかったから、知っているのは私だけ。
祖母は母が幼い時に亡くなったから、祖母の妹に当たる人に母は育てられたと言っていた。
でも、もしかして祖母もこの原因不明の突然死だったのではないかと、最近強く思うようになった。
だから我が子を慰めているふりしながら、私も恐怖に怯えている。
次は自分なんじゃないかと…。