昔、私はゲーム雑誌会社で働いていました。会社が潰れてからは振り返ることもなかったのですが、今はもう話しても大丈夫でしょう。ゲームにまつわる不可解な話を一つ、記してみます。
私たちの会社では、定期的に裏技集を集めた本を出版していました。これには新しいソフトはもちろん、古いものやマイナーなソフトの技も含まれていました。裏技に関する読者からの質問には、新人編集が電話で答えるのが慣例でした。
ある日、読者からセガサターンの『百物語』に関する質問が寄せられました。彼はゲーム内の101話目の怪談が見られないと言っていました。記憶は曖昧ですが、これは全話を見終わると見られるおまけだったはずです。
電話を切った後、その確認に取り掛かりました。しかし、作業は校了日と重なり、一晩中かかることになりました。交代でゲームを進めることになり、私もプレイに加わりました。
夜が更け、70話ほど進んだころ、人手が減り、最終的には私一人でプレイすることになりました。疲労と眠気のせいか、目を閉じてしまったようです。目を開けると、画面には異様な光景が映っていました。老婆の顔がグニャグニャに歪んでおり、画面下半分が震えていました。イヤホンからは稲川氏の声が繰り返し再生されていました。
不気味さに耐えかね、電源を切ろうとしたとき、様々な効果音が乱れて再生され始め、老婆の画像も更に歪んでいきました。電源を切った瞬間、男の声で「遅ぇよ」と聞こえたのを覚えています。
怖くなった私は、同僚に続きをプレイしてもらいました。しかし、セーブデータは壊れ、「ギギギギギギギギ」と表示されていました。その後、データは消去され、外付けメモリロムを使って裏技の確認は無事終了しました。
この一件は、ゲーム雑誌会社での奇妙な経験の一つに過ぎませんでした。ゲーム開発会社や出版社は、何かと不思議な出来事が起こりやすい場所なのかもしれません。昼夜の感覚が曖昧な環境や、疲れた人々が多いことが、何かを引き寄せていたのかもしれませんね。