昔、私の住んでいたアパートでの話。
ある夜、酔っ払って家に帰ると、狭い玄関に女性のサンダルが置かれていた。
なぜここに?私には思い出せない。
サンダルを手にとってよく見ると、打ち上げられた海岸のゴミのようにボロボロだった。
酔いが一気に覚めた。
しかし、部屋は荒らされていなかった。
前の住人の仕業か?と思い、翌日不動産屋に鍵を変えてもらいに行った。
しかし、不動産屋は大家の許可が必要と言った。
そこで、近所に住む大家に直接話しに行った。
大家から聞いた話によると、前の住人は三十代の女性で、半年前に病気になり地元に帰ってしまったらしい。
しかし、その女性の家賃は、身元保証人という人が振り込んでいたとのこと。
詳しい事情はわからなかったが、大家は鍵を変えることに了承してくれた。
何事もなく数週間が過ぎたある日、彼女が私の部屋に遊びに来てくれた。
その夜、彼女の悲鳴で私は目を覚ました。
目の前には、痩せこけた女性が立ち、じっと私たちを見ていた。
彼女の目が私たちと合った瞬間、その女性は押し入れの方向へと消えていった。
彼女は震えながら、
「絶対夢じゃなかった」と言い残し、翌朝早くに帰ってしまった。
その後、物置の扉が開いているのを見つけた。
物置にはペンキや箒、脚立などが置かれていた。
何気なく、部屋の天袋を覗こうと思った私は、脚立を持って部屋に戻った。
天袋を開けて中を覗くと、なんとそこには古びた人形があった。
「どうしてここに?」不気味な感じがして一度は目を背けたが、再度覗くと人形はそこに座っていた。
この人形、どうやってここに…?疑問に思いつつも、人形を取り除こうと決心した。
バイト先の友人から、高枝はさみを借りて、人形を取り除くための計画を立てた。
計画実行の日、友人と共に天井裏の人形を取ろうとした。
しかし、高枝はさみで人形をつかもうとすると、人形は不自然に動き、はさみから逃れた。
私は驚き、頭を天井板に打ってしまった。
友人が私を助けてくれたが、私は恐怖で身動きできなくなってしまった。
友人は「一度、自分で見てみる」と言い、脚立に上がった。
しかし、すぐに友人の足が震え出した。
彼は真っ青な顔をして、
「それは人形じゃない、本物の赤ん坊だ」と言った。
私たちはすぐに警察に通報した。
警察が調べた結果、その赤ん坊は以前の住人が隠していたもので、長い間天井裏で保管されていたことが判明した。
そのアパートからは速やかに引っ越し、二度とそこには戻らなかった。