東京で一人暮らしをしている女性がいた。
彼女はある時、誰の子とも分からない子供を身ごもったのだが、育てることができそうになかったので、自宅でひっそりと子供を生み、そのまま東京駅のコインロッカーに生まれたばかりの赤ん坊を捨ててきてしまった。
その後、東京駅には近づかないようにしてはいたが、一人で暮らすのがいたたまれなくなり、地方の実家に帰った。
しばらくして東京の会社に就職することになり、再び東京で暮らすようになったが、それでも東京駅には近づかないようにしていた。
しかし、あるとき、会社の用事でどうしても東京駅に行かなければならなくなった。
そのとき例のコインロッカーがどうしても気になったので、ふとそちらを見ると、男の子が一人泣いている。
気になって「どうしたの?」と聞いたが返事がない。
「お父さんは?」と聞いたら「分からない」と言う。
「お母さんは?」と聞いたら、その男の子は
「お前だよ」
と言ったらしい。