ある村に、死を異常に恐れる男がいた。
特に男が恐れていたのは「自分が埋葬された後に、棺の中で息を吹き返してしまうのでは?」というものであった。
その男が病気の床にあるとき、家族全員に棺の中に電話線を引き、息を吹き返したときに確実に連絡が取れるようしてほしいと遺言を残し亡くなった。
葬式の後すぐに、遺族の住む家に奇妙な電話が入った。内容は何を言っているのか聞き取れない上に、ザーザーと混線しているような音が混じっていた。
家族は、いたずら電話だろうと思い電話を切ってしまった。
しかし、男に可愛がられていた孫だけは「さっきの電話はおじいちゃんからの電話だよ!」と言ってきかなかった。
最初は家族も子供の戯言だろうと思っていたが、あまりに孫が譲らないので、男性が死んでいることを納得させようと墓を掘り返そうということになった。
結局墓を掘り返したのは、奇妙な電話を受けた5日も後のことだった。
棺を開けた遺族達は仰天した。
棺の蓋には無数の引っかき傷が残っており、男は家族全員を怨むような、怒りの表情のまま息絶えていたらしい。